IT初心者からプログラマーになりたいと思って、たくさんある入門書やプログラミングスクールからよさそうなのを探してみる、という人は多いです。場所や時間を自由に働けるし、パソコン一つで仕事ができることで人気のプログラマーという職業ですが、学習でつまずく人も少なくはありません。
この記事では、パソコンやIT初心者の方がいきなりプログラミングの勉強を始めるその前に、表計算ソフトを使ってみることについて解説します。
※この記事は2021年1月時点で執筆しています。
プログラミング学習の第一歩に表計算ソフトがいい理由
開発環境の構築がとても楽
プログラミングの学習をはじめたいあなた、自分がプログラミングをして開発をするために何が必要になるか、ご存知でしょうか?
入門書の購入や学習用動画を探したり、スクールを検索したりするかもしれません。自分に合う教材や環境を見つけたら、最初にすることは「開発環境の構築」です。
この開発環境の構築が、独学ではとてもむずかしかったり、新しくパソコンやソフトを調達しないといけない、ドメインの契約やサーバーの構築などの初心者にとってとても難しいことが必要となります。
表計算ソフトとして有名なものに、Microsoft のExcel、Google スプレッドシート、WPS Office(旧称Kingsoft Office)などがあります。Excel はパソコンを購入したら最初からインストールされていることが多く、インターネットに接続していなくてもすぐにソフトを起動して操作することができます。Google スプレッドシートは、誰でも無料で作成できるGmail アカウントがあり、インターネット接続さえできればブラウザを利用して使用することができます。WPS Office は、Microsoft Office(Word / Excel / PowerPoint)がインストールされていないパソコンを持っている人におすすめの、安価に購入できるMicrosoft Office と互換性のとても高いソフトです。
これらの表計算ソフトは、開発環境の構築の手間はほとんどかからずに、学習を始めたいと思ったその瞬間に学習することができ、構築コストもほとんどかからないのでとてもおすすめです。
開発現場で必要となるExcel 力
私はプログラマーとして普段は仕事をしていますが、システム開発のプロジェクトで表計算ソフトをたくさん使います。「え?プログラミングだけが仕事じゃないの?」と思われる方もたくさんいます。システム開発とは、プログラミングをすること以外にもたくさんの工程での仕事があります。
開発するシステムの企画
システムの設計
開発スケジュールの管理
作成したシステムの動作をテストするための項目の作成
などなど、実際にプログラミングをする以外にもたくさんの工程がシステム開発にはあり、そしてこれらの工程で多く使われるのはExcel をはじめとする表計算ソフトなのです。
※なこちは普段、Google スプレッドシートをたくさん使っています。
プログラミングのスキルは身についているけど、「表計算ソフトの基本的なスキルについては全然身についていない」という人は開発プロジェクトですごく苦戦することになります。プログラマーとして会社などの組織での仕事をしたい人や、ビジネスパートナーとの調整をしながら仕事をする環境に挑戦をしたい人は、表計算ソフトを身につけることはとても重要なことです。
プログラミングって実は表計算みたいなもの?
私はビジネス向けのシステムの開発を主に行っているエンジニアですが、「データベース」の構築や、入力されたデータをシステム利用者が使いやすいように加工したり、入力された内容に基づいて自動計算した結果を表示したり、デザインを整えたファイルにして出力する、というシステムの開発をしています。
入力されたデータがどのようにデータベースにたまっていき、そのデータをどのように加工するのか、どのような計算をするのか、デザインをどうしようか、といったことをプログラミングで実装する前に表計算ソフトで実装することで開発イメージをより深めることができます。システムを利用する人から。「システムに溜まっているデータをExcel で出力したい」というご要望をいただいたり、「Excel でできるこの機能をこのシステムにも追加してくれないか」といった要望がよくあります。
このような相談を受けたとき、表計算ソフトの機能を理解していなければ利用者の要望の意図を理解することが難しくなります。また、表計算ソフトの標準機能にもともと備わっているものをシステム開発してしまう、といった無駄も起こってしまいます。置かれている環境に応じた開発の要件を考察するためにも、表計算ソフトの基本機能をしっかり理解していること、できれば表計算ソフトの達人になっていることが重要です。表計算ソフトで実現できることを知ってからプログラミングの学習をはじめることで、学習効果の向上や、ビジネスシーンでの活躍の場はきっと広がります。
表計算の機能、まずはこれだけ覚えてみよう
四則演算(加減乗除)
プログラマーとしての表計算ソフトの活用の第一歩として、入力した数値を四則演算(足し算、引き算、掛け算、割り算)してデータを活用できるようにすることを学んでみましょう。
商店の売上管理ソフトを開発したいといった時には、まずは表計算ソフトで売上管理表を作成して、どのようなデータが入力され、どのような見た目で表示されると使いやすいのかを考察できるようになります。
画像出所:『Google スプレッドシートの教科書2020』より
よく使う関数(SUM / IF / VLOOKUP)
表計算ソフトでよく使う関数を覚えましょう。
指定した範囲の数値の合計を求める「SUM関数」や、
指定したセルに対して条件を指定して条件ごとに計算結果を変える「IF関数」、
データベースから検索した結果の値を表示させる「VLOOKUP関数」
など便利な関数がたくさんあります。プログラミングによって実装したい機能は、表計算のどのような関数に似ているだろうかという考察を深めることができるようになりますのでぜひ、関数を使ったデータの処理を覚えましょう。
画像出所:『Google スプレッドシートの教科書2020』より
グラフの作成
画像出所:『Google スプレッドシートの教科書2020』より
表計算ソフトに入力されたデータを使ってどのようなグラフを作成することができるのかを知っておきましょう。ビジネスで使用するシステムの多くには分析機能を開発することがあります。どのようなデータがシステムに入力されていたなら、どのようにグラフとして表示することができるだろうかというヒントになります。ひとことでグラフと言っても、「縦棒グラフ」「積み上げ縦棒グラフ」「横棒グラフ」「円グラフ」「レーダーチャート」「散布図」など、様々なグラフがあります。グラフの種類すべてを覚える必要はありませんが、データの活用をするための発想として、グラフの使用ができるように学習をしておきましょう。
表計算ソフトを学習するのにおススメの教材
Excel を学ぶなら
できるYouTuber 式 Excel 現場の教科書
本、電子書籍で出版されていて、本の内容と連動した無料のYouTube 動画による解説があります。本で理解しにくかったら動画で学習する、本の内容を予習/復習するために動画を観るといった新しい学習スタイルで楽しくExcel を学ぶことができます。
Google スプレッドシート を学ぶなら
Google スプレッドシートの教科書(最新年度版)|Google アプリの教科書シリーズの教科書
電子書籍のみで販売されているGoogle スプレッドシートの入門書です。電子書籍の強みを活かした、全ページフルカラー、低価格、持ち運びにかさばらない、といった特徴があります。電子書籍内での実装内容は、こちらの無料のYouTube 動画で解説されていて、表計算初心者の方にやさしい内容となっています。
まとめ:IT初心者からの第一歩を表計算ソフトで
未経験からプログラミングの学習をすぐにでもはじめて活躍したい!と考えている方は多いと思います。しかし、学び始めることを早くするのではなく、効果的にプログラミングを身につけられる自分自身の土台を作り上げることが、習得の近道となります。
外国語を勉強したいからといって、いきなり海外留学する人は少ないと思います。まず、国内で言語の基礎を学習してから、留学生活を有意義にするためのプランを建てるはずです。プログラミング「言語」の習得も同じことが言えます。いきなりプログラミング言語の学習環境に飛び込むのではなく、まずは表計算から、IT基礎力の土台を身につけてみましょう。
楽しくプログラミング力やIT活用力を高めていきましょう!