エンジニアの仕事は短期間で結果が出なかったり、頑張り度などで評価を測れるわけではありません。技術力についても、どういった形で評価をしたらいいのか不透明です。
近年は、様々な企業が「評価制度」というものを公開しています。このエンジニアの評価制度について解説します。
エンジニアの評価制度とは
エンジニア評価制度とは、社員が持つ知識・スキルを正当に評価することです。給与・昇進などを検討するために会社が設けている制度のことをさします。一般的に、エンジニアの評価をすることは難しいとされており、正当な評価ができていないと不満に感じる社員も多くいることから、社員の成長促進・納得を得るために、導入されています。
エンジニア評価制度の必要性
エンジニア評価制度が必要となった理由を考えてみた時、正しい評価がされないことへの不満を正しい評価ができるように設定されています。評価制度に従うことで、役職・給与が決定することは当然のことながら、「会社がほしいエンジニアはこんな人」という点が見えるようになるポイントでもあります。
エンジニアの評価制度:メリット
エンジニアが評価に対して不満を抱いた時、離職させないための工夫でもあります。評価制度によって、企業側のメリットがあるように見えますが、エンジニアにとってもメリットがあります。
まず、「モチベーション」が上がります。正当な評価をしてもらえるので、圧倒的にモチベーションが上がるので、仕事を続けて頑張れます。自分の能力に見合った待遇があれば、必然的にモチベーションも上がります。「これだけの評価がもらえるなら」と、より現状の仕事を頑張って取り組めるようになります。
次に、「スキル」が向上します。エンジニアの評価制度があることで、モチベーションが上がり、合わせて技術・スキルを向上させようと思えるようになります。エンジニアが、現職を辞めたいと思う理由に「スキルや技術を伸ばせない」の意見があります。モチベーションが上がる環境であれば、技術やスキルアップが必然的にできるようになるので、評価制度がある企業を選ぶことがおすすめです。
エンジニアを評価する観点とは
エンジニアとして働くようになると、プログラマからスタートし、仕様策定などの上流工程を扱うエンジニアに成長、その後、マネジメントを担うという流れがあります。また、マネジメントスキルがないのにも関わらず、「経年」だけで昇進した人もいます。評価制度があることによって、正しい評価をつけられることで判断ができます。
エンジニアを評価する観点
- スペシャリストの評価
- 関与と影響の輪
- ゼネラリストの評価
- 事業評価を組み込むか
具体的に、4点について解説します。
スペシャリストの評価
スペシャリストの評価では、「スキルの高さ」を見ます。当然、スキルが高いエンジニアであることが理想的です。技術力が高いエンジニアがいるだけで、企業にとっての価値に繋がります。希少性、求められるスキル、給与の相場が異なるため、担当するプログラミング言語によって、給与の最低限と最大額を設定します。
関与と影響の輪
ここでは、スキルの高さのみで評価をすると不都合が生じてしまいます。例えば、全く同じスキルで、周囲とコミュニケーションを積極的にとり、メンバーのモチベーションアップ・教育熱心なエンジニアを評価します。コミュニケーション能力を評価する部門と言ってもいいでしょう。スキル以外の「組織貢献度」を取り入れることも大切です。
ゼネラリストの評価
特定分野で、特別なスキルがなかったとしても、スキルの幅をどう組み込むかによって正当な評価をつけられます。例えば、インフラの設定からサーバーサイドの実装、フロント側の実装(Webサイト、iOSやAndroidのアプリケーションなど)など幅広く担当できるのであれば、評価されて当然でしょう。
1人でサービスを形に出来るのは素晴らしいことです。スタートアップのような段階において特に重宝します。スキルの高さだけに留まらない評価によって、多様性を評価できます。
事業評価を組み込むか
スキルの高さ、幅、またコミュニケーション能力などが評価される方向性もありつつ、「売り上げが好調なサービスを牽引する人」と「スタートアップの状態で市場規模が小さいサービスを担当するエンジニア」をどのように評価したらよいのでしょうか。この点においては、エンジニアが重要な要素を担っていることだけに限らず、企画力・営業力などのスキルも優秀であることが大切です。
評価制度の実例
ベンチャー企業でエンジニア評価制度を取り入れた実例について3社紹介します。
- MIIDAS
- スマートニュース
- リブセンス
MIIDAS(ミイダス)の実例
ミイダスでのエンジニアの評価制度は、スキル・能力をベースに評価しています。81段階・20万円刻みの等級・給与制度が特徴的です。スキルを伸ばすことで、短期間でも年収が上がる仕組みになっています。「成果だけではなく、能力で評価すること」が特徴的です。
私自身エンジニアとして働いていた経験から、エンジニアの仕事は他の職種とは違い、必ずしも結果に直結しないことも数多くあると感じていました。例えばフルスタックでとても優秀なエンジニアに、「今のフェーズではこれをやってほしい」と誰でもできるようなタスクをお願いしたとします。すると、成果だけを見て評価が下がってしまうなんてこともあり得る。しかしその人には能力があるので、次のフェーズでは価値を発揮できるような業務をお願いしたいと思いますよね。
スマートニュースの実例
スマートニュースのエンジニアの評価制度では「スキル給与」に「成果ボーナス」が反映される特徴があります。技術力が求められるエンジニアにとって、「スキルに見合った給与をベース」としてもらえるのは、スキルの高いエンジニアが活躍しやすい傾向があります。
スキルと給与のミスマッチが、会社の文化にとってよくないことはご存知の通りだと思います。プロフェッショナルは自分の価値が正当に評価されないことを、好ましく思いません。だから給与は基本的にスキルで決める。
ただ、それだけだと達成した成果はどうなるの?といいう疑問が生まれるので、成果はボーナスに反映させています。同じスキルレベルでもアクション次第で成果は異なりますよね。成果はボーナスで返しつつ、スキルの高い人はちゃんとスキルに見合った給与をもらっている。そういう市場価値に応じたフラットな評価制度を取り入れています。
リブセンスの実例
リブセンスでは、エンジニア職についてエンジニアが評価しています。エンジニアの知識を持った人が評価することで、年齢に関わらず優秀なエンジニアを高く評価できる特徴があります。
それまで当社では、エンジニアもほかの職種も同じ評価方法でした。そのため当時は、売り上げに直結するような成果が評価されると思われており、公平な評価基準が浸透していませんでした。そこで、2017年頃にエンジニアの職能責任者(VP of Engineering)が中心になって「Band制度」を職種ごとにカスタマイズしました。これにより、「エンジニアがエンジニアを評価する体制」が構築され、職種に応じた評価が明確になったのです。
エンジニアに特化した「評価制度」がある企業
ここでは、エンジニアに特化した「評価制度」がある企業を紹介します。
- VOYAGE GROUP
- GMOペパボ株式会社
- 株式会社はてな
VOYAGE GROUP
VOYAGE GROUPでは、メディア事業とアドテクノロジー事業を行う企業です。2011年にエンジニアによるチームを超えた「技術力評価会」という取り組みをスタートしました。半年に1度実施、評価結果は昇格に大きく影響する評価対象者は、2人の評価者に対して1時間半のプレゼンを実施し、点数評価・五段階評価はせず、文書うで書いて理解してもらい、改善案を議論する場も設定されています。
エンジニアからの評価で納得感を得て、ビジネス面だけではなく、能力面でもしっかりと評価できる制度を作るなどしています。
GMOペパボ株式会社
GMOペパボ株式会社は、「minne」などのハンドメイドマーケットやレンタルサーバーの「ロリポップ!」などの個人向けインターネットサービスを提供しています。エンジニアの職位は、立候補制で上位職種と面談をして一次評価を受ける仕組みです。エンジニアの能力の基準に沿って主張する必要があります。
エンジニア職位制度立候補資料、業績考課・グレード考課ではすべてオープンで全従業員が閲覧可能な状態です。情報公開を重視し、評価する側・される側とともに、客観性を意識する必要があります。
株式会社はてな
株式会社はてなは、「はてなブログ」「はてなブックマーク」などのサービス運営を行っています。新卒・中途・入社年数に関わらず、エンジニアには必ずメンターが一人つきます。評価は、「成果」「行動スキル」「専門スキル」の三つ軸をもちます。評価点をつけるだけでなく、定性的なフィードバックを行います。
一般的な「評価制度」がある企業
エンジニア特化の評価制度はない一般的な評価制度のある企業を紹介します。
- 面白法人カヤック
- 株式会社ZOZO
- 株式会社メルカリ
- サイボウズ株式会社
面白法人カヤック
面白法人カヤックでは、「運」「社員の相互評価」「上司の評価」の三要素で決定します。給料日前に全社員がサイコロを振り「基本給」にサイコロの出目分をかけた割合を給与にプラスします。また、同じ職種同士の相互投票によるランキング結果を月給に反映させ、上司の主観による賞与の分配を決定します。
株式会社ZOZO
株式会社ZOZOでは、「ZOZOTOWN」を運営するZOZOは、エンジニア求人に対する質問に対して社長や社員がTwitterで直接回答したことが話題となりました。エンジニアもデザイナーも営業も、全職種共通の軸で評価されます。基本的に、基本給・ボーナスともに一律同額、各種手当、職能給も設定され、給与テーブルが存在します。
株式会社メルカリ
株式会社メルカリでは、提供しているサービスだけではなく、新卒エンジニアの9割をグローバル採用するなど話題となることが多い企業です。人事評価システムを内製しているため、自社に最適化したものとなっています。「絶対評価」「ノーレイティング」によって、個人のパフォーマンスを最大限に評価します。
サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社では、企業向けアプリケーションを提供しています。「市場価値」を人事評価制度に取り入れています。一般的な企業が設定しているような「給与テーブル」がなく、「その人の市場価値」で給与が決定します。社員が自分の市場価値を把握した上で、給与交渉が行えます。
エンジニアの評価基準・制度に不満があるなら転職を検討しよう
エンジニアの評価基準や制度に不満があるのなら、転職も検討しましょう。
イードア
ITに強いエージェントサービスです。IT領域を中心にエージェントサービスを行い、顧客の採用課題解決にも貢献しています。特にスタートアップや最先端テクノロジー領域を得意とされています。キャリアアップしたい人のための転職におすすめです。
アクシスコンサルティング
IT人材のキャリア支援をしてくれます。キャリアアップを目指している方へ向けた支援も行っています。障害のキャリアパートナーを目指して、転職のその次にスコープを入れたキャリアパスを提案してくれます。
レバテックキャリア
転職希望者と企業との間にキャリアアドバイザーが入ります。転職のお手伝いをするサービスで、ITエンジニア・デザイナーの転職に精通したキャリアアドバイザーが求人紹介から入社までをサポートし、キャリアアップの実現をお手伝いしてくれます。
まとめ:エンジニアの評価制度がある企業を検討してみましょう。
エンジニアの評価制度を取り入れている企業の紹介、評価制度そのものについてご理解頂けましたでしょうか。エンジニアとして、正当な価値を評価してもらえる企業で働くことで、自分自身の価値や現状のレベルなどが見えてきます。
よりよい環境に身を置いて働きたいのであれば、評価制度を取り入れている企業への転職を検討しましょう。