「OCRを導入しているけど、手作業の方が効率的で結局使われていない」
「AIの機能が企業で活かされているシステムを知りたい」
この記事では、AI搭載型の文字認識システム「AI OCR」について徹底的に解説していきます。
それでは、早速見ていきましょう!
OCRの仕組み
AI OCRについて解説する前に、OCRの仕組みについて理解しましょう。
- 文字の読み取り領域の設定
- 文字の抽出
- 辞書と照合し決定
- 文字の訂正
- テキスト化
それでは一つずつ確認していきましょう。
OCRの仕組み①:文字の読み取り領域の設定
まず、画像データから文字が記載されている位置を解析し、文字を読み取る領域として設定します。
OCRの仕組み②:文字の抽出
次に、切り取った領域から文字だけを抽出します。
OCRの仕組み③:辞書と照合し決定
抽出した特徴を辞書と照合し、特徴との照合結果が一番近いもので決定します。
OCRの仕組み④:文字の訂正
決定した内容に対して、前後の文字や全体の文章などから辞書に従い訂正します。
OCRの仕組み⑤:テキスト化
最後に認識結果をテキスト化します。
AI版文字認識「AI OCR」とは?
「AI OCR」とはOCRにAI技術を加えたものです。
以下の観点から、具体的に説明していきます。
- AI OCRとOCRの違い
- AI OCRに使われているディープラーニング技術
それでは、早速確認していきましょう。
AI OCRとOCRの違い
OCRは、Optical Character Reader(光学文字認識)の略で、手書きやプロントされた文字をスキャナー
で読み取り、テキストデータに変換する技術です。
一方で、AI OCRは、従来のOCRの技術にAIの技術をかけ合わせたものです。
AI技術を組み合わせることで、文字認識率の向上やチェック作業などの非効率な業務のカットできるようになりました。
OCRとAI OCRの文字認識について、以下の表にてまとめました。
癖文字 | 達筆 | かすれ文字 | 外国語 | |
OCR | × | × | × | △ |
AI OCR | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ |
AI OCRを導入することで、人や従来のOCRでは難しかった文字も認識できるようになりました。
AI OCRに使われているディープラーニング技術
AI OCRに使われているディープラーニング技術は、CNNなどの画像認識技術です。
文字が書かれた画像データをAIが学習することで、文字の識別精度を上げることができます。
また、AIの画像認識技術は文字の認識だけでなく認識対象の抽出にも使われています。
AI OCRを使う3つのメリット
「AI OCR」を使う3つのメリットについて解説します。
- 文字の読み取り精度が高い
- さまざまな帳票に対応可能
- 事務作業の効率化ができる
上記の項目について一つずつ確認していきましょう!
メリット①:文字の読み取り精度が高い
AI OCRでは、一度誤認識した文字を学習させることで、文字認識率を向上することができます。
また、一人一人癖のある手書き文字に対応したAI OCRも登場しています。
このように、AI OCRの高い識字能力により、人間の手入力や目視による確認作業、修正作業を大幅に減らすことができるメリットがあります。
メリット②:さまざまな帳票に対応可能
帳票をOCRする際、事前に読取位置や項目の詳細定義をする必要がありました。
また、決まったフォーマットの帳票にしか対応できなかったりとデメリットも多くありました。
一方で、AI OCRでは、読取位置や項目をAIにより正確に自動抽出できます。
そのため、紙の資料をスキャンするだけで文字を認識できる便利さがあります。
このように、AI OCRでは請求書や納品書、発注書などのさまざまな帳票に対応することが可能です。
メリット③:事務作業の効率化ができる
従来のOCRでは、業務システムに入力する際に、文字や数字の情報だけでなく、その情報が何を意味するのかが分からないと入力ができませんでした。
そして、その意味の対応付けは人間が行う必要がありました。
一方で、AI OCRでは、抽出した情報の意味付け、読み取った情報の項目や業務システム入力に必要な情報などの抽出・生成することが可能です。
また、AI OCRと「RPA(Robotic Process Automation)」とを連携することで、紙の帳票からデータの抽出、データ入力、集計、デジタル出力といった一連の業務を自動化することができます。
このように、AI OCRを活用することで、手入力や目視による確認作業の手間が大幅に減るため、業務システムへの入力作業を効率化させることができます。
AI OCRの導入例
メリットだらけの「AI OCR」は、実際どのように活用されているのか、導入例を3つ紹介します。
- 金融
- 不動産
- 事務
それでは、上記項目について一つずつ見ていきましょう!
活用例①:金融
銀行などの金融業界では紙ベースの業務が多く存在します。
例えば、有力地方銀行の横浜銀行において、AI OCRを導入することで、生産性向上による営業強化のためルーティン業務の見直しに着手しました。
AI OCRとRPAでネットバンキングの申込書類の処理などを自動化し、業務の効率化に成功しています。
このように、(株)などの特殊文字や特殊なフォーマットの帳票が使われる金融業界において、AI OCRは従来のOCRに代わりに活躍しています。
活用例②:不動産
不動産業界では、AI-OCRによってあらゆる物件図面を文字データして読み取り、管理・保管するために活用されます。
AI OCRによって、従来紙やファイルでバラバラに保管されていた物件情報を一括管理することができるようになりました。
例えば、ケイアイスター不動産株式会社は、RPAとAI-OCRを活用したデータドリブン経営によって、1年程で14,000時間を超える工数削減に成功しています。
このように、不動産業界において、購入者と取引の多様性、 スピード重視の競争環境における優位性を確立するために活用が進んでいます。
活用例③:事務
事務作業の場面で、手書きした文字を手書き文字専用のAI OCRに読み取らせデータ化するために使われることが多いです。
例えば、オーダーメイドスーツを扱う「FABRIC TOKYO」では、従来メモ帳からExcelに手入力していた頃よりも180時間の労働時間削減に成功した事例もあります。
このように、AI OCRは事務作業において活用が広がっています。
AI OCRを活用する上での注意点
「AI OCR」を活用する上での注意点について確認しましょう。
- 100%の文字認識精度は不可能
- 大量のデータが必要
活用をお考えの方は、はじめる前に一読してくださいね。
注意点①:100%の文字認識精度は不可能
AI OCRでは、人の癖文字や走り書きを完璧に読み取ることはできません。
実際、AI OCRの識別率は90%後半であるものが多く、100%の精度は困難であることがわかります。
AI-OCRが読み取れる範囲としては人が見た時に読み取れる文字か読み取れない文字かが標準となってきます。
あくまでも、業務を効率化するためのシステムという認識で活用しましょう。
注意点②:大量のデータが必要
AIは大量の文字データを学習して、初見の文字データに対応できるようになります。
そのため、読み取らせたい文書のデータが少なければ、いつまでも識別率は上がりません。
特に、癖のある手書き文字は似たような文字データが集まりにくいので、一般的な文字よりも誤認が多くなります。
まとめ
今回、AIの文字認識技術「AI OCR」について活用メリットや導入事例について丁寧に解説してきました。
AI OCRによって、業務効率化に成功した企業がたくさんあることがお分かりいただけたかと思います。
今後、AI OCRの開発はますます進むと予想されるので、大注目のシステムです!